お知らせ

【参加者レポート】FFN Asia Pacific Regional Congress 2026(タイ・バンコク開催)

この度、2026年9月3日(木)~5日(土)に開催されました、FFN Asia Pacific Regional Congress 2026(タイ・バンコク開催)につきまして、ご参加をされました2名の先生方からレポートをご執筆いただきましたので、掲載いたします。

①香川県立中央病院 リハビリテーション科
 本田 透 先生

この度参加させていただきましたFFNAP 2026について、以下のとおり報告いたします。
高齢化に伴って増加する脆弱性骨折への対策、多職種連携による包括的な骨折予防・治療体制の最新知見、さらにアジア太平洋各国の現状について学びました。
また、既存画像から椎体骨折を検出して開始するFLSと、各診療科が注目し始めているオステオサルコペニア対策を連携させ、FLSのスキルやノウハウを活用して、より多くの高齢患者へ効率的に介入する方策を提案しました。

主な学術内容

1.基調講演脆弱性骨折を公衆衛生上の重要課題として捉える必要性や、アジア太平洋地域の各国における大腿骨近位部骨折診療の質的評価が紹介されました。

2.Fracture Liaison Service(FLS)の推進

各国のFLS導入事例や成果が報告され、診療体制の標準化や地域レベルでの普及戦略について議論されました。
中国の事例が興味を引きました。中国では、クラスターとなる8つの病院では、大腿骨近位部骨折患者用の病床が倍以上に増加し、48時間以内に72%が手術を受けることができる環境になったそうです。一方、高齢者の大半が住む非都市部では、まだ、基礎的なデータすらない状態であるようです。

3.サルコペニアと転倒予防

サルコペニアと脆弱性骨折との関連性について最新の知見が紹介されました。

特に、AWGS 2025コンセンサスのアップデート、転倒リスク評価、運動介入、栄養管理などが取り上げられ、筋力維持と身体機能向上が骨折予防に重要であることが示されました。

4.整形老年科医との協働

高齢骨折患者に対する整形外科医と老年科医の協働体制について多数の報告がありました。
急性期治療のみならず、術後リハビリテーション、認知機能評価、栄養評価、退院支援を含めた包括的介入が患者予後改善につながることが強調されました。

5.AI・デジタル技術の応用

近年のトピックとして、AIを活用した画像診断支援や治療予後予測モデルに関する研究発表がみられました。
また、スマートフォンアプリなどを利用した骨粗鬆症治療薬の服薬継続支援システムも紹介され、今後の臨床応用への期待が示されました。

6.地域医療政策への展開

中国、タイ、台湾をはじめとする各国の取り組みが紹介され、高齢化社会に対応するための国家レベルの骨折予防政策や、地域包括ケアとの連携モデルについて学ぶことができました。

私の発表について

2日目の午前のFree Paper 2 のセッションで口演しました。
二人の座長のうちお一人は、これまでの学会で何度もお会いしているフィリピンのIrewin Tabu先生であったことは心強かったです。最後には答えやすい質問をしてくださって終わることができました。

・発表の背景と目的

FLSの対象は、骨折で入院した患者に限らず、既存の画像検査で椎体骨折が確認された患者にも拡大すべきです。英国では、AIがCT矢状断像から椎体骨折を検出し、放射線科医が確認したうえでFLSチームへ報告する治療体系についてのエビデンス創出のための3年間の試験が開始されています。
一方、患者の予後改善にはオステオサルコペニア対策も重要であり、各診療科でサルコペニア対策が話題になっているのに、骨粗鬆症対策にはほとんど着手されていません。この課題認識を共有し、新たな連携モデルを提案しました。

・発表内容

同一患者のCT画像を用い、椎体骨折の検索を起点とするFLSと、椎体のCT値および筋断面積の評価から始めるオステオサルコペニア対策を別々に進めるのではなく、相互に連携して患者に対応する方が合理的であるとの考えを提示しました。日常診療で既に撮像されたCTから骨と筋の情報を同時に活用することで、骨粗鬆症治療、筋量・身体機能への介入、転倒予防、また、併存疾患の管理状態の改善による総合的な医療レベルの向上を一体的に進められる可能性を示しました。

・質疑応答と成果

発表後には多くの拍手をいただきました。しかし、主催者であるタイの医師からサルコペニアの評価方法について質問を頂きましたが、質問が早口であったため十分に聞き取れず、回答には課題が残りました。それでも、FLSとオステオサルコペニア対策を統合する、高齢者ケアの新たな視点を提示できたと考えます。
これまで、CT矢状断像で椎体骨折が見つかる患者にいては、opportunistically identified(偶然発見された)の椎体骨折という表現で語られてきましたが、偶然見つけるのではなく、proactive(積極的)に椎体骨折を探して骨粗鬆症の治療対象患者を見つけるよう考え方を変える必要があります。

結語

本学会を通じ、脆弱性骨折対策には、骨折治療に加えて骨粗鬆症・サルコペニア管理、転倒予防、多職種・地域連携を含む包括的アプローチが重要だと再認識しました。AIを活用した診療支援技術への理解も深まりました。
発表では、既存CT画像から椎体骨折と筋量低下を把握し、FLSとオステオサルコペニア対策を連携する構想を提示しました。多科のコラボレーションでFLSのノウハウが生かされる体制を整えたいと思います。
以上、ご報告いたします。

②西宮渡辺病院 整形外科
 正田 悦朗 先生

FFNAPは、2026年9月3日から5日、タイ バンコクのHotel Nikkoで開催されました。日本からは、FFN globalの会長を務められている澤口先生、新百合ヶ丘総合病院の松下先生、香川県立中央病院の本田先生、川嶌整形外科病院の理学療法士の松田先生と私の5人でした。

会は、まず澤口先生のopening remarksから始まりました。FFN globalやFFNAPの最初の頃は、整形外科的な話題、2次骨折予防チームの働きなどについての発表が多かったと思います。手術方法やいかに早く手術を行うか、手術までの待機期間が長い理由は何かなどでした。また、どのようにすれば骨粗鬆症の治療を始めることができるか、さらに継続するにはどうしたら良いか、これをうまく行うために2次骨折予防チームやOLS、FLSの重要性を訴える発表が多く見られました。しかし、最近ではこのようなことはすでに達成されていて、各患者に沿った治療をどのようにすれば良いかというようなところが中心になってきていました。48時間以内に手術を行えるように全身状態を高めたり、手術、麻酔に備えて服用している薬の調整をしたり、術後の栄養状態の改善やリハビリテーションなどきめ細かいことがdiscussionされていました。そのため、FFNでの整形外科の役割は徐々に少なくなっているように感じました。

私の発表は、e-posterでしたので事前にスライドをアップロードしました。本田先生は、口演で多くの質問がありました。また、松田先生は積極的に質問をされていました。

アジアの各国では、医師だけでなく看護師、理学療法士、栄養士などmedical staffの方が多く参加され、流暢な英語で発表されていました。おそらく、医学関係の教育や仕事は英語で行われているためと思われました。また、若い方の参加も多かったです。日本の場合、どうしても国際会議や学会での英語の発表には敷居が高いところがあります。しかし、最近では日本語を喋れば英語にしてくれるアプリも出てきているようですので、なんとかできそうな気もします。一昨年のFFNAPへの日本からの参加は5人で、昨年のFFN globalには中堅の先生やmedical staffの方の参加もありましたが、今回のFFNAPの参加も5人でした。参加者が少ないことに加えて、参加者の年齢が高いことも気になります。今後中堅、若手の方々のさらなる参加が期待されます。来年のFFN globalはアジア圏の順番になり、マレーシアで開催されます。比較的行きやすい場所ですし、助成金の制度もありますので、ぜひ多くの方々に参加していただき、各国の参加者と交流したり、国際的な流れを知っていただければと思います。