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【参加者レポート】FFN Global Congress 2025(ポルトガル開催)

この度、2025年10月2日(木)~4日(土)に開催されました、FFN Global Congress 2025(ポルトガル開催)につきまして、ご参加をされました4名の先生方からレポートをご執筆いただきましたので、掲載いたします。

①岡山医療センター 整形外科
髙尾 真一郎 先生

 今回、ポルトガルのポルトで2025年10月2日~4日に開催された第13回FFN Global Congress 2025へ参加、発表する機会をいただきましたので報告させていただきます。FFN Global Congressへの参加は2015年オランダのロッテルダムで開催された第4回、2017年スウェーデンのマルメで開催された第6回の学会以来の久しぶりの参加となるため、とても楽しみにしていました。初めて参加した第4回FFN Global Congressでは、初めての海外学会、初めて英語oral presentationであり、また座長を萩野先生に努めていただいたこともあり、とても思い入れのある学会です。整形外科医2年目で参加したこの学会で、当時は日本でもまだまだ知る人の少なかった脆弱性骨折リエゾンサービスを学び、非常に大きな衝撃を受け、その後の私の道を決定づけることになりました。
 まず、ポルトについて簡単に紹介します。ポルトは大西洋に面しているため、海鮮料理がとても多く、イワシ、タラ、タコなど日本人の口に合うおいしい料理が目白押しでした。また、町全体が世界遺産に登録されており、どこに目をやっても美しい街並みです。ただ、とても坂が多いため、街歩きをするには体力、気力、時間が必要です。現在の二次性骨折予防の取り組みの多くは大腿骨近位部骨折に対するものであり、本学会でのpresentationの多くは大腿骨近位部骨折に関するものでした。私は現在、脊椎外科として脊椎疾患の診療を行っているため、私が日常診療で扱う脆弱性骨折は椎体骨折が主となります。日本でも大腿骨近位部骨折患者に対する二次骨折予防は加算がついたこともあり、この数年で大きく普及していますが、椎体骨折に対する二次骨折予防はまだ一般的になっているとはいい難いと感じています。いつの間にか骨折と言われるように、病院を受診せず、診断されないままとなるケースが多いこと、診断されたとしても手術加療とならないケースが多いことなどが要因となり、まだまだ二次骨折予防がなされない場合が多いのが現状です。本学会においては、Dr. Sahotaを中心に椎体骨折に関するセッションがいくつか組まれており、椎体骨折に対する二次骨折予防の取り組みに注目が集まっているように感じました。特に2日目のEducation session 3では頚椎の脆弱性骨折患者の症例検討があり、参加者の多くが老年科医、外傷外科医であり、脊椎外科医が私だけだったこともあり、また、アジア圏からの参加者ということもあり、司会のDr. Sahotaから何回か意見を求められる機会をいただきました。稚拙な英語でのコメントしかできず、求められていた返答が十分にできていないのだろうなと、英語力の低さを痛感せざるを得ない機会ともなってしまいましたが、本学会で最も多くの参加者と意見交換のできた貴重な機会となりました。
 本学会で学んだ知識を、今後の日常診療にも生かしながら、椎体骨折患者への二次骨折予防へ取り組んでまいりたいと思います。
このような貴重な機会をいただきましたFFN-Jの皆様に感謝いたします。

②総合南東北病院 外傷センター
尾島 広野 先生

 私は、2025年10月2日から4日にポルトガル・ポルトで開催された 13th Fragility Fracture Network Global Congress 2025 に参加しました。学会には46か国から600名以上が参加しており、様々な国の参加者と交流を深める中で、高齢者の脆弱性骨折に対する各国の取り組みについて意見交換を行い、今後の課題について考察する貴重な機会となりました。今回、5分間のOral発表を行いましたので、その内容について以下に報告いたします。発表後の2分間の質疑応答では、海外の参加者2名から「輸血量が多い点」および「セメントレス人工骨頭の手術法」に関する質問をいただき、有意義な議論を交わすことができました。
【背景】大腿骨転子部骨折に対する治療は骨接合術が一般的である。しかし、粗鬆骨である高齢者の不安定型骨折では、偽関節やカットアウトによる再手術、術後の免荷期間を要することが問題点である。当科では、骨質や骨折型により骨接合では固定破綻のリスクがある症例に対して、早期の荷重開始と再手術防止を目的に人工骨頭置換術を行っている。
【目的】高齢者の大腿骨転子部骨折に対して人工骨頭置換術を行った症例の骨折型と術後成績を明らかにすること。
【研究デザイン】ケースシリーズ
【設定】1施設での後ろ向き研究
【対象】2019年2月以降に人工骨頭置換術を行った大腿骨転子部骨折41例(男性11
例、年齢中央値87歳)
【主要アウトカム】骨折型、立位獲得までの期間、歩行訓練開始までの期間、歩行能力(術前、術後30日、120日)、再手術の有無を調査した。
【結果】骨折型は、AO31A1 0例、2.2 3例、2.3 14例、3.1 2例、3.2 0例、3.3 22例であった。AO2.2
3例は前内側の骨性支持の欠損や頚部骨折を合併していた。立位保持可能となるまでの期間は平均2.6(1-8)日(40例)、歩行訓練開始までの期間は中央値4.5(1-60)日(36例)だった。術前:独歩36.5%、1本杖12.2%、歩行補助具24.4%、屋内のみ歩行可能24.4%、歩行不能2.4%、術後30日:独歩2.4%、1本杖4.9%、歩行補助具43.9%、屋内のみ歩行可能17.1%、歩行不能22.0%、不明2.4%、死亡7.3%、術後120日:独歩4.9%、1本杖4.9%、歩行補助具36.5%、屋内のみ歩行可能14.6%、歩行不能19.5%、不明7.3%、死亡12.2%であった。再手術は自転車からの転倒によるインプラント周囲骨折1例であった。【結論】高齢者の大腿骨転子部骨折で、前内側の骨性支持の欠損や高度の粉砕、逆斜骨折の症例に対して、人
工骨頭置換術を行った。早期に荷重が開始でき、再転倒によるインプラント周囲骨折以外の再手術はなかった。
 このたび、FFN-Japanのご支援により、このような貴重な経験をすることができました。心より感謝申し上げます。今後も国内の脆弱性骨折診療の発展に貢献できるよう、努力を続けてまいります。

③三田市民病院  整形外科/骨粗鬆症センター
岩倉 崇 先生

 この度、2025年10月2~4日にポルトガル・ポルトで開催された第13回 Fragility FractureNetwork Global Congress 2025 に参加しましたので、ご報告いたします。ポルトはポルトガル第二の都市で、ポルトガル王国発祥の地として知られ、ドウロ川沿いの街並みが世界遺産に登録された歴史的な港町です。会場は、旧市街地から徒歩15~20分に位置し、19世紀の旧税関施設を改修した Alfândega do Porto Congress Centre で、重厚で趣深い建物でした(写真1)。
 学会は3階の4つの会場と1階の展示会場で行われました。講演やシンポジウムでは、脆弱性骨折に対する多職種連携、増加傾向にあるインプラント周囲骨折、orthogeriatric(脆弱性骨折で入院する高齢者への包括的ケア)、二次骨折予防、リハビリテーション、栄養管理、転倒予防、社会経済的負担など、FFN Japanと共通する幅広いテーマが取り上げられていました。各国がそれぞれの医療制度や課題を抱えながらも、共通の方向性をもって取り組みを進めていることを再認識しました。
 一般演題でも、多職種での取り組みや課題、脆弱性骨折後の機能予後を左右する合併症予防、人材育成とデジタル技術によるFLSの質向上、さらに教育・地域政策を含む包括的アプローチの重要性など、国際的に共通性の高い話題が多く発表されていました。また展示会場では、参加者がモニターで自由に e-poster を閲覧でき(写真2)、希望者は紙ポスターの掲示も可能という形式でした。個人的には、講演や一般演題を通して、栄養に関する発表が増えている印象を受けました。私自身の演題が「大腿骨近位部骨折患者の栄養と生命・機能予後」に関する内容であったこともありますが、今後は国内においても、脆弱性骨折後のみならず骨折予防(OLS/FLS)における栄養管理が重要なテーマになると実感
し、自施設でも取り組むべき課題と考えました。
 学会2日目の夜には学会主催の Gala Dinner が開催され、会場はドウロ川対岸のワイナリー Caves Ferreira でした(写真3)。ウエルカムドリンクとして甘く濃厚なポートワインが提供され、開始は予定の20時30分から大幅に遅れたものの、ファドという民族音楽の演奏とともにポルトガル文化を堪能する貴重な機会となりました。日本からも10名以上の参加があり、国際交流の場としても大変有意義でした。
 今回の学会参加を通じ、多職種連携と地域包括的ケアの重要性を改めて認識するとともに、自施設におけるFLSおよび地域連携のさらなる充実に努め、より良い脆弱性骨折診療体制の構築に向けて取り組んでいきたいと考えています。

写真1

写真2

写真3

④新百合ヶ丘総合病院
纐纈 祐美子 先生

 2025年9月にポルトガルで開催されたFFN Globalで大腿骨近位部骨折患者の術後日常生活自立度と自宅退院率について以下の内容をポスター発表した。
高齢者に多くみられる大腿骨近位部骨折は、身体機能の低下や寝たきり状態を招き、生活の質や介護負担に大きな影響を及ぼす。こうした課題に対処するため、日本では2021年に診療報酬の改定が行われ、多職種連携による早期手術・リハビリの推進、二次性骨折予防への取り組みが評価されるようになった。本研究では、改定以降に治療を受けた大腿骨近位部骨折患者を対象に、日常生活自立度の回復状況および自宅退院率を調査し、治療効果を検討した。
 対象は2021年10月〜2024年3月に治療を受けた313名(平均84歳)で、日常生活自立度をランクJ(自立)、A(歩行には介助が必要)、B(車椅子)、C(寝たきり)で評価した。また、受傷前ランクJであった患者が入院から30日後、120日後に生活自立度が維持されていたかをランクJ+AとランクB+Cに分けて調査した。更に自宅から入院した患者228名の120日後に自宅に帰ることができた割合を調査した。
受傷前の自立レベル(J+A)は94.2%であったが、入院120日後には65.1%へと低下した。また受傷前に自宅での生活を送っていた患者は72%であり、そのうち30日後に自宅へ退院したのは15%、120日後には73.3%であった。過去の報告では術後6週間で自宅退院率は13〜66%とされるが、今回の120日後の73.3%という結果は比較的良好であった。これは多職種チームによる早期介入、継続的リハビリテーション、二次性骨折予防を含む包括的ケアが寄与した可能性が示唆される。
以上より、診療報酬改定後の日本の医療体制は、大腿骨近位部骨折患者における自立度の一定の維持・回復および高い自宅復帰率に貢献したと考えられる。引き続き多職種連携の強化とリハビリの支援の継続を行いたい。また、今後は年齢、併存疾患、他施設比較など、多因子解析によるさらなる検討が望まれる。